2011年05月25日

謎の集団

「これで、いいっすか?」


彼は、小走りにやって来て


ポケットから 小銭を取り出し


煙草と一緒に おっちゃんに渡した。


「おうっサンキュー!これで、ジュースでも飲みぃや」


男は いつもの如く、チップを貰い 礼を言った。


実を言うと、このおっちゃんは ただの客ではない。


このお店には プロと噂されている客が、数名いて


このおっちゃんも その中の一人である。

そして、それらの人は お店から


出したコインの数量を 制限されていた。

男は このお店に働いて、かれこれ半年程になるので

この謎の集団の事は もちろん良く知っていた。


だが、彼は高校の頃から


パチンコやアレンジボールを 打っていた訳で


学校を卒業してからは


日に、サラリーマンの日当ぐらいは 稼いでいた。


しかし、当時世に出始めたばかりの このスロットマシンというものは


数回打った事はあったが、機械の全体的な造りは


パチンコと違い、機械の造りやゲーム性を考えると


勝てる要素が、まったくないように思えた。


確かに彼は このお店の常連である 友人数名から


このお店の スロットコーナーには


何かしらの方法で、絵柄を並べて


毎日のように、稼いでる連中が、いるらしいという噂は


つねづね聞いていた。


それに 彼は スロットコーナーのスタッフという事もあり


集団の各々が、お金をあまり使わずに


コインを コンスタントに出している光景を


日々、目にしていた。


だが、当時のパチンコ台は 現在のそれとは違い


単純かつシンプルな チューリップ入賞口を 組合せた台が、ほとんどで


釘を ある程度読む事さえ出来たら


簡単に出る台を 見つけられたのだが、

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2011年05月19日

序章

「にいちゃん!煙草買って来てくれへんか?」

小綺麗なダボダボでねずみ色の

作業服を着た常連のおっちゃんが
吸いきったセブンスターの空箱を

ぎゅっと捻りながら言った。

「はいっ!セブンスターですね?」

今でも 従業員が、ここまでのサービスを
する事などないと思うが、

もちろん その当時も同じである。

ただ、この男の場合 出来る限り

トラブルを回避したいという思いもあったが

一種の悪賢い性格からくるものかも知れない。

客に嫌われ 嫌な思いをして働くより

出来ることなら好かれて、気分良く働いた方が

よっぽど得だと思っていたのである。


昭和55年 沖縄ーー


だから 機械のトラブルで呼ばれた場合

トラブル解消後、中のコインを数十枚取って

マシンの下皿へ入れてやっていた。

普通 全国何処の遊技場でも

機械のトラブルの場合は


トラブル解消後、3枚分程度のサービスと
ほとんどの店舗で、決められているものだ。

だが、男は 必要以上のサービスをしてやり


それ以外の場合でも

客のある程度の我がままも


聞いてやっていた。

結果、公認ギャンブルという仕事柄
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